“would”は“will”の過去形と覚えていませんか?
しかし、ネイティブが使う約半分は過去形以外の“would”。
その使い方を押さえることが“would”をマスターする鍵なのです。
今回は日本人特有の丁寧な言い回しにも欠かせない“would”の本当の意味と便利な使い方をご紹介します。
“would”の本来の姿を知ろう
英会話の上達において避けては通れない助動詞。
しかし、そこでつまずいてしまう人が多いのも事実です。

では、なぜ上手くクリアできないのでしょうか。
それは“will”=「未来」のように“would”=「“will”の過去形」とひとつ覚えをしてしまうからだと考えています。
逆に、学生時代に習った固定概念を取り払って、その言葉に流れる本当のニュアンスを捉えることができれば、助動詞は意外と簡単にマスターできるものです。
今日は「“would”=“will”の過去形」という考え方を一旦脇に置いて、“would”が持つ本来の意味を一緒に学んでいきましょう。
“would” が持つ2つの側面
まず“would”には2つの表情があることをご紹介します。
1つ目は、みなさんもよく知っている「“will”の過去形」という側面です。

はい、その通りです。
しかし、実際の会話で使われる割合は半分程度だと思ってください。
つまり日常会話において“would”の機能は「“will”の過去形専門ではない」のです。
残りの半分は“would”のもう1つの側面である「現在のことについて使う “will”」になります。

確かに「?(はてな)」が沢山浮かびますよね。
これについては、後ほどゆっくり解説して行きますので、安心してください。
まずは「“will”の過去形」として使うケースを簡単におさらいしておきましょう。
“will”の過去形として使う“would”
助動詞“will”には大きく4つの意味があります。
助動詞“will”
① 単純未来:〜になる
② 意志:〜するつもりだ
③ 推定:〜だろう
④習慣・習性:よく〜する
の4つですね。
しかし、それぞれが全く別の意味というわけではなく、全ての意味の根底には「実際にはわからないけど、話し手には自信がある」という共通ニュアンスが存在しています。
“will”の意味について確認しておきたい方は【必見!】助動詞willの本当の意味。be going toとの違いとは?を参照してください。
今おさらいしている「“will”の過去形として使う“would”」とは、つまり“will”の4つの意味を過去の話として伝える場合の“would”のことを指しています。
例文でも確認してみましょう。
1 :単純未来の過去形 I thought he would apologize to me soon.⇒私は彼がすぐに謝ると考えていた。
2-1:意志の過去形 I decided I would do my best.⇒私はベストを尽くそうと決心した。
2-2:意志の過去形(否定) She wouldn’t say “Yes”.⇒彼女はどうしても「イエス」と言わなかった。
3:推定の過去形 I suppose it would be five years ago when they got married.⇒彼らが結婚したのは5年前だっただろう。
4:習慣・習性の過去形 I would go that store with my grandmother.⇒その店には祖母と一緒によく行ったものだ。
このように過去の事柄について「〜になる」、「〜するつもりだ」、「〜だろう」、「よく〜していた」と表現したい場合に、“will”の過去形として“would”を用いることがあるのです。
しかし、すでにお伝えした通り日常会話で使われる“would”の約半数は、“will”の過去形としての“would”ではありません。
ではどんな“would”が使われているのか。次の章で確認して行きましょう。
現在のことについて使う“would”
ネイティブの会話に出現する“would”の約半分は現在のことについて使う“would”です。
“would”は文法上“will”の過去形と表現されますが、過去のことに限らず現在のフレーズにこそ多用されています。
そして、この“would”をマスターするためのとっておきのポイントがあるので、ぜひ覚えておいてください!
それは「“would”はやわらかい“will”」という理解です。
“would”はやわらかい“will”
すでに学んだように“will”には「実際にはわからないけど、話し手には自信がある」というニュアンスが存在しましたよね。
自信があるという表現からもイメージできる通り、“will”は強気な言葉なのです。
しかし、普段の生活の中で「絶対こうなるでしょ!」と自分の意見を直球でぶつける言葉しかなかったら、人間関係もギクシャクしますよね。
時には「私は〜だと思うんですが」や「〜になりそうですよね」のように、少しオブラートに包んで伝える必要も出てくるもの。
そんなシーンで使えるのが“would”なのです。

はい、“would”は“will”が持つ意味をより弱く、しなやかで丁寧にした言葉になります。
主に下の3つの使い方をするので、それぞれについてご紹介していきます。
・ 確率の下がった推定
・ フレーズに丁寧さを加える
・ 仮定法で「もしも」の話をする
確率の下がった推定
まずは「推定」です。
“will”にも「〜だろう」という推定の意味がありますね。
しかし“will”を用いる場合には「〜だろう」という日本語が持つニュアンスよりはるかに高い確信を持った推定になります。
この場合約85%〜90%以上の確率で雨になると考えている印象なのです。
一方で、雨は降りそうだけど、そこまで確信がない場合“would”を用います。
“would”はやわらかい“will”なので、“will”よりも実現確率が下がります。
日本語に訳してしまうと、どちらも同じように聞こえますが「推定」の“will”と “would”には“will”より“would”の確率の方が低い、という違いが存在しています。
フレーズに丁寧さを加える
続いては「丁寧さ」を添える働きをする“would”について見ていきましょう。
これは「依頼」や「要望」、「意見」を伝える場合に役立ちます。
■依頼
まずは「依頼」の表現から。
以下の2つの例文を見比べてみてください。
・Will you pass me the salt?⇒塩をとってくれる?
・Would you pass me the salt?⇒塩をとっていただけますか?
“will you〜”の文よりも“would you〜”の方が丁寧な言い回しになっていることに気づかれたと思います。
このように、相手に何かを依頼する場合、“will”よりも“would”を使う方がぐっと丁寧な表現になります。
家族間や親しい友達同士では“will you〜”でも良いですが、それ以外の相手には“would you〜”を使っておいた方が良いでしょう。
■要望の“I would like〜(I’d like〜)”
依頼だけではなく、こちらの「要望」を伝える場合にも“would”は活躍します。
「〜したい」と言えば、“I want〜”を思い浮かべがちですが、これは自分の希望をストレートに伝える表現なので、時と場合によってはやや子供っぽい響きになってしまいます。
大人が「〜したいのですが」とやわらかく要望を伝えたい場合には、“I want〜”の代わりに“I would like〜(I’d like〜)”を用いることをオススメします。
■意見の“I would say(I’d say〜)”
「私は〜だと思います」という意見表明をするシーンでも“would”を使って“I would say(I’d say〜)”という表現を使うと角が立ちません。
「“His idea is the best.”彼のアイディアが一番いい」と言い切ってしまうと、他のアイディアが一番と思っている人に威圧感を出してしまう可能性がありますね。
そのようなシーンでは、“I’d say〜”という言い回しを使って「私としては〜」という前置きをつけてあげると良いです。
もちろん「I think his idea is the best.」でもいいですが、さらに周りに対して配慮したいときは「I’d say~」という言い方がしっくりきます。
“I’d say his idea is the best.”を直訳すると「私は、彼のアイディアが一番いいです、と言うでしょう」となります。
少し廻りくどいかも?と思うほど丁寧な表現ですね。
仮定法で「もしも」の話をする
“would”の活用法の最後は、仮定法です。

そう身構えず、まずは例文を見てください。
「私は行きます」と普通に未来の話をするときは“I’ll go. ”となりますね。
これが例文のように“I would go”となると、行こうとしていることには変わらないけれど、その確度は「will」より低くなります。
ではなぜ確度が低くする必要があるのか。
それはこのフレーズが「もし~したら、たとえ~しても」という「仮定」の話だからです。
「仮定」ということは「そうなるかもしれないし、ならないかもしれない」。
不確かな話なんですね。
そこで「will」よりもやわらかい「would」を使います。
ちなみに、こういう仮定の話をする時は「if~」に続く文は「ひとつ前の時制にする」という決まりがあります。
例えば、“I’d go even if it rains. ”の場合・・・
「たとえ雨が降っても」→「雨が降るのが確定するのは未来」→「本来は“if it will rain”」→でも仮定の話だから「ひとつ前の時制の“現在”にする」→「if it rains」
となりますね。
これが「仮定法」のルールです。
今回の“would”や仮定法のように、英語の時制というのは単に過去の話について使うだけでなく、現在のことであっても「不確かなこと」や「言いにくいこと」など、強い表現を避けたいシーンではひとつ前の時制をあえて使うことがあります。
直球表現を避けたがる日本人にとっては、実はとても重宝するのが“would”のような過去形の言葉たちなのです。
“would”以外にも“could”や“might”といった助動詞の過去形も同様の使い方をするケースがありますので、ぜひこの時制の特徴を覚えておいてくださいね。
まとめ
今日は“would”が持つ2つの側面を学びました。
1つは「“will”の過去形」、もう1つは「現在のことについて使われる“will”」でしたね。
そして現在のことについて用いる場合は、“would”は“will”が持つ意味をより弱く、しなやかで丁寧にした言葉「やわらかい“will”」になることを確認しました。
今回はここまでです。お疲れさまでした!
